社長の独言

社長独言(父のやりかた)

実家が木材業だったので様々な雑作業があった。
小学から大学を出て就職浪人している頃まで父は時々私にその
作業を手伝うよう命じた。

掃除はもちろん、穴掘り、杭打ち、ドブ浚い、長柄の鎌を使う
雑草の下払い、立木の枝打ち、山焼きの手伝い、木を伐採した
山でのワイヤー掛け、まだ小さかった甥である部長とちょっと
した小屋を作ったこともある。

「ワイヤー掛け」とは大木が伐採されたままの山を地下足袋は
いて動き回り切り倒された木にワイヤーを掛けそれにウインチ
とワイヤーでつながった滑車を引っかける作業だ。
こうしておいて運搬トラックが停車している現場に設置してあ
るウインチを巻くと大木も道もない山から積込み現場まで引き
ずりだせる。

強力なウインチがワイヤーを巻き始めると木材の抵抗と均衡す
るまでたるんでいたワイヤーはまっすぐになろうとそこら中を
なぎ倒しながら走る。
滑車を掛けた後に安全な位置に逃げそこない走るワイヤーが頭
に飛んできて着けていたヘルメットが弾き飛ばされ危うく大怪
我しそうになった事がある。
幸運な事にノーヘルだったのを父に注意されて着用した直後だ
った。

ウインチを操作する作業員は現場から遠く離れていて現場の状
況が見えないから無線機頼りの危ない作業だった。

高校3年に車の免許を取るとさらに作業は増えた。
車の運転や好きな大工仕事以外は嫌で嫌で仕方がなかった。
私が逃げ出すと大きな手術の後遺症で体力のなかった父は黙っ
て自分でやろうとするからやるしかなかった。

しかし、箒、ツルハシ、スコップ、かけや、鎌、鉈、鋸、チェ
ーンソーなどの道具の使い方を覚え、身の回りの少々の事は自
分で直せるようになった。(小学6年で軽自動車の運転はでき
るようになった。もちろん私有地内だが・・・。)
また、体を使う作業は段取りを考え効率を良くしないと疲れる
から合理的な考え方が自然に身についたかもしれない。

大人しかった私は人が働く現場を体感し他人との付き合い方も
覚えたはずだ。私は今でも現場の開けっ広げな冗談を言い合い
笑い飛ばす雰囲気が好きである。

結果的に私は生きるための基本的な「体を使うこと」、「考え
ること」、「働くことの原理原則」を教えてもらったように思う。

父に意識的な教育的配慮などというものがあったとは思わないが
遺産よりもっと大切なものを残してくれたと感じている。


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